2002-06-03
さて次にフィガロの「何でも屋の歌」、これは『トムとジェリー』の「へんてこなオペラ」が最高(力説)!!犬のバリトン歌手に余興の売り込みを断られた手品師が腹いせに指揮者と入れかわってリサイタルをメチャメチャに…いやそんな話はどうでもいいんです。とにかくもともと楽しい歌が見事なハチャメチャ漫画に仕立てられていて、これはもう全ての方に見てもらいたい(力説)!!これを見てしまうと普通の人間の歌う「何でも屋の歌」では満足できなくなってしまったりもしますが、10年ほど昔のオランダの公演でフィガロがジャグリングをしながら歌うという演出もあったので、みんなもっとどんどん『トムとジェリー』に挑戦してみてほしいものです(違うって)。『トムとジェリー』ではクラシックネタのエピソード以外にもクラシックが普段のBGMに使われることで有名ですが、特に「セビリア序曲」の「ロッシーニクレッシェンド」と呼ばれるだんだん盛り上がる音楽に乗って白熱する追っかけっこはもう伝説の域(力説)!!
「セビリア序曲」と言えばフェリーニの『8 1/2』ではマルチェロ・マスコロヤンニが口ずさんでいましたが、マストロヤンニにはなぜか「セビリア」が集中しているようです。『黒い瞳』では湯治場(?)の生演奏(!)でロジーナのアリア「今の歌声は」が歌われていました。『白夜』では恋敵ジャン・マレーが「みなさんを『セビリアの理髪師』にご招待しましょう」と誘うとお店のお手伝いのおばあちゃんが「『セビリアの理髪師』は大好き」とうっとりと「今の歌声は」を歌い、オペラを見に行ったマレーとマリア・シェルは言葉もかわさず見つめ合います。ちょうど舞台では「それは私のことね」とロジーナが愛を確信する二重唱。このシーンにマストロヤンニは登場しませんが、実はこの二重唱には、フィガロが手紙を書くようにすすめるとロジーナはもう書いて用意してある、という映画と同じ展開があり、マストロヤンニがフィガロと重なっているとも言えます。「今の歌声は」もただ恋こがれているだけではなく「私は勝ってみせるわ」と歌うアリアで、ロジーナとシェルが強くて利発な女性なのもリンク。しかしマストロヤンニはフィガロと違い彼女に恋してしまっているので悲しい結末を迎えることになります。
最後にマストロヤンニ以外の一本も。オーソン・ウェルズの『市民ケーン』が手に入れられなかったものの一つは妻のオペラ歌手としての成功でした。彼女が最初にケーンと出会った時にどうしてもとせがまれ、虫歯の痛みをこらえて歌ったのが「今の歌声は」。ケーンはなんとか彼女を成功させようと優秀な先生をつけオペラハウスまで建てましたが、しかし彼女には「勝ってみせる」つもりはなかったのでした。
次回はオペラハウスを建てられなかった男『フィツカラルド』。
◇トムとジェリー『へんてこなオペラ』MAGICAL MAESTRO(1952米)
監督:テックス・アヴェリー
音楽:スコット・ブラッドレー
◇『8 1/2』OTTO E MEZZO(1963伊)
監督:フェデリコ・フェリーニ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ/アヌーク・エーメ
◇『白夜』LE NOTTI BLANCHE(1957伊)
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
音楽:ニーノ・ロータ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ/マリア・シェル
◇『黒い瞳』OCHI CHYORNYE(1987伊)
監督:ニキータ・ミハルコフ
音楽:フランシス・レイ
出演:マルチェロ・マストロヤンニ/シルヴァーナ・マンガーノ
◇『市民ケーン』CITIZEN KANE(1941米)
監督:オーソン・ウェルズ
音楽:バーナード・ハーマン
出演:オーソン・ウェルズ/ジョセフ・コットン
◆『セビリアの理髪師』IL BARBIERE DI SIVIGLIA(1816初演)2幕4場
作曲:ロッシーニ G.Rossini(1792-1868)
原作:ボーマルシェ
台本:ステルビーニ
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