2001-07-03
クラシックが「効果的に」使われた映画ってたくさんありますけど、そういうのとはまた違って、まるでこの映画のために作られたかのように違和感なく聴こえてくるんですよね。キスシーンの「何と美しい夢」(プッチーニ『つばめ』より)やオーケストラの部分も、「あの曲だ」ってわかっても次の瞬間そんな事を忘れてしまうし、音楽だけでなく衣装や美術、風景まですべてが一体化しているのが凄いなあと思います。反対にミスマッチが面白かったのは『GIジェーン』(1997米)ですね。軍の特別部隊の話なんですけど、苛酷な訓練が一日中続いた上に夜はレポートを書かなきゃいけなくて、イジワルな(?)上官が、みんなが睡魔と闘いながら机に向っているのを知っててラジカセで「私のお父さん」を流して眠気を誘うっていう笑えるシーンなんですよ。
安陪:たしかに眠いかも!!面白い使われ方ですね。
川北:『異人たちとの夏』(1988日本)では主人公の男性が「私のお父さん」を愛聴しているという設定で全編に流れていて、レトロな浅草とプッチーニに国境を超えた郷愁を感じました。でも父親の幽霊に会うというストーリーとの妙な「父親」つながりがちょっと気になってしまったんですよね。「私のお父さん」は有名でしょう?違和感を感じた方も多いと思うんです。
安陪:「私のお父さん」は人気があってよくリクエストされますし、ほんとうに歌詞の内容まで有名なようで、結婚式で歌ったりするとお父様が泣いていらしたりします。でも『ジャンニ・スキッキ』を知っている人は少ないんじゃないかと思いますね。
川北:「私のお父さん」がロマンティックだから『ジャンニ・スキッキ』もきっとステキなオペラよねって期待すると、あまりのドタバタとブラックなオチにきっと驚かれますよね。私はストーリーを聞いてがっかりするオペラのベスト3に入るんじゃないかと思います。いや、楽しいオペラですけど。
というわけで『ジャンニ・スキッキ』ストーリー。『ジャンニ・スキッキ』はプッチーニの『三部作』の中の1本、『三部作』はそれぞれ50分位の一幕ものオペラが3本まとめて見られるという『アメージングストーリー』のようなオムニバス・オペラです。
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『外套』:妻の浮気相手を殺してしまう夫。題名は「人はみな外套の中に喜びや悲しみを、時には殺人をも隠しているのだ」という名セリフ(歌詞)から。庶民を描いたイタリア映画のような趣の作品。
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『修道女アンジェリカ』:出演者は女性のみという珍しいオペラ。親の許さぬ子供を産んだために修道院に入れられたアンジェリカはその子供が亡くなったと知らされ絶望し、自殺する罪を聖母に祈る。
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『ジャンニ・スキッキ』:亡くなった金持ちの老人ブオーゾは全財産を教会に寄付するという遺言状を残していた。親類たちはなんとか遺産を手に入れようと死体を隠し、友人スキッキにブオーゾの替え玉になってもらい遺言状の作り替えをしようとするが、ブオーゾになりすましたスキッキは「家屋敷は親友のスキッキに」と言って財産をうまく横取りしてしまう。(「私のお父さん」を歌うラウレッタはスキッキの娘でその恋人はブオーゾの甥。彼の家族に気に入ってもらうためにも力を貸して、と父親に頼むのでスキッキも重い腰を上げ、替え玉を引き受ける。)
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川北:
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