2001-03-14
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1幕、革命勃発も近いパリ郊外のサロン。従僕のジェラールは貴族社会に反発を抱きながらも令嬢マッダレーナに思いを寄せている。夜会の席で詩人のアンドレア・シェニエが愛の崇高さを歌い旧体制を批判すると(「ある日青空を眺めて」)、皆が耳をそむける中でマッダレーナは彼に惹かれ、感動したジェラールも革命家を志し制服を脱ぎ捨てて出ていく。
2幕、五年後、革命下のパリ。ジェラールは革命政府の一員となったが、愛するマッダレーナを密かに探している。革命で路頭に迷ったマッダレーナはシェニエを訪ね、革命詩人の彼もまた追われる身だが、死ぬまで彼女を守ると言って二人は愛を誓う。そこへジェラールが現れ彼女を連れて行こうとし、それを阻むシェニエと決闘となるが、刺されたジェラールは相手がシェニエと気付くと夜会での敬意を思い出し、彼女を守ってやってくれと彼を逃がす。
3幕、革命裁判所。ジェラールは革命の正義を建て前にシェニエを逮捕してマッダレーナをおびき寄せようとする自分に矛盾を感じながらも(「祖国の敵」)シェニエの告発状にサインをする。シェニエの命乞いにあらわれたマッダレーナにジェラールは愛を告白し、たとえ一時でもと彼女を求める。マッダレーナはシェニエの命の代償になれるのならと承知するが、彼女がこれまでの身の上を語るうち(「私の死んだ母が」)、ジェラールは心うたれてシェニエを救う決心をする。人民裁判でシェニエは祖国への愛と自分の正義を訴えジェラールも弁護するが、シェニエは死刑を宣告される。
4幕、監獄。シェニエは死刑を待ちながら詩を書き上げる(「五月の晴れた日のように」)。そこへマッダレーナとジェラールがあらわれ、マッダレーナは看守に金や宝石を渡して女死刑囚の身替わりにしてくれと頼み、ジェラールは二人の助命を嘆願しに行く。シェニエとマッダレーナは獄中で再会し永遠の愛を誓うが、その時死刑執行の名前が読み上げられ、二人は「死に栄光あれ」と叫んで死刑台への馬車に乗り込む。
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(アンドレ・シェニエは実在の詩人で、歌詞には彼の詩も一部使われており、またマッダレーナとジェラールは創作であるもののシェニエと一緒に処刑された女性が彼の恋人だったのでは?という話もあるそうです。)
「恋人を救う代償に関係を迫る」というシチュエーションはプッチーニの『トスカ』のほうが有名かもしれません。マッダレーナは「苦悩の中で愛が私に生きろと呼びかけた」その愛のためなら受け入れると言い、それを聞いたジェラールは心動かされますが、トスカは「歌に生き恋に生き、他人にも尽くし信仰を忘れたこともないのに、なぜ神はこんな運命を私に与えるのか」と嘆き、それでも動じない警視総監スカルピアを刺してしまいます。その上彼は最初からトスカの恋人を救ってやる気などなく、恋人は処刑されトスカも自殺するという壮絶な結末。にもかかわらずトスカは実は彼に惹かれていたという説まであるほどスカルピアはカリスマ的な権力者(?かどうかはともかく単なる悪役を超えた存在)なのに対し、『アンドレア・シェニエ』のジェラールはあまりにも非力で、もしマッダレーナが自分のものになったとしても本当にシェニエを救えたのか?とつっこみたくさえなります。しかしそんな弱い人間である彼がオペラに陰影を与えているとも言え、悩むアリアは特に名場面。もちろん主役二人のアリアや2、4幕と二回ある再会の二重唱も美しくドラマティックで、激情派(抒情派プッチーニに対して)と呼ばれるジョルダーノの『アンドレア・シェニエ』は熱いドラマのお好きな方にお薦めのオペラです。
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