ヴォカリーズ・エチュード
2018-09-22


どんどん大曲志向になってきていたヴォカリーズ集シリーズですが、今回は久々にフランスのヴォカリーズ・エチュード集からも1曲、今年没後50年のカステルヌオーヴォ=テデスコ(1895-1968)を取り上げることにしました。

フランス近代ヴォカリーズ・エチュード集とは、パリ音楽院声楽科の教授A.L.Hettichが様々な作曲家に委嘱したコレクション。日々の発声練習用とは思えず、初見用にしては長いので、レッスンや試験の課題だったのでしょうか。全部で何曲あるのかよくわかりませんが、確認できるところでは1906年のフォーレ作が第1番、35年のメシアン作が第151番、Hettichが37年没で、約30年の間に150曲以上が書かれたことになります。複数曲の人もいますがほとんどは1曲ずつ、100人以上の国際色も豊かな著名作曲家に委嘱するなんて、何と偉大でユニークな企画なのでしょう(それゆえに出版にはトラブルもあったようですが...)。各曲は音域や難易度、長さがまちまちなので、制約なく作曲できた事が想像され、また「歌詞のない歌」の自由度も各人の個性発揮につながったのではと思います。

その第63番にあたるカステルヌオーヴォ=テデスコの「ヴォカリーズ・エチュード op.53(1928)」は、ユダヤの嘆きの歌を思わせる主題と、少し速い民族舞踊的な中間部による三部形式で書かれています。器楽用編曲では「ヘブライの歌」と呼ばれるので、後のヴァイオリン協奏曲「預言者たち(1931)」からこの曲へ辿り着く方もいらっしゃるのではないでしょうか(彼はスペイン系ユダヤの家系のイタリア人で、ブロッホ「シェロモ」に啓示を受けて25年頃からユダヤの素材を用い、「預言者たち」へ至った)。

ちなみに同年の「ヴォカリーズ op.55」はまた違った素材を用いた3曲で(パンとエコー/船乗りの嘆きのように/フォックストロットのテンポで)、イタリアのリコルディ社の近代ヴォカリーズ集(これも全体像がつかめませんが少なくとも1929年に16人の3曲ずつが初版)に収められています。次の機会にはぜひ4曲まとめて演奏してみたいです。

なお、ヴォカリーズからは離れますが、当日はゲストのフルートによるエネスコ(1881-1955)の「カンタービレとプレスト(1904)」も演奏します。こちらもパリ音楽院の試験課題曲です。


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次回の演奏メニュー

2018年10月7日(日) 11時開演(10時40分開場)
於:本郷・金魚坂 / コーヒーまたは中国茶つき 1,500円

cafconc第133回
ヴォカリーズ集vol.5〓歌詞のない歌

プロコフィエフ「歌詞のない五つの歌」sop,pf
エネスコ「カンタービレとプレスト」fl,pf
カステルヌオーヴォ=テデスコ「ヴォカリーズ・エチュード」sop,pf
ケックラン「リリアンのアルバム 第1・2集」より
 和解のワルツ pf /スイミング fl,pf /
 スケーティング・スマイリング sop,fl,pf /幸せへ向かう道で sop,fl,pf

柳沢亜紀(ソプラノ)
川北祥子(ピアノ)
ゲスト:中村淳(フルート)

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